世界遺産として

世界遺産とは?

世界遺産は、国際連合の専門機関である「ユネスコ(国連教育科学文化機関)」によって1960年代に提唱された。

そのキッカケは、エジプトの「アブシンベル神殿」が、ナイル川に建設されるアスワンハイダムによって水没の危機にさらされたこと。

この神殿をまるごと移築して救済するキャンペーンがなされ、「人類共通の遺産を守ろう」という世界遺産の基本的な考え方が生まれた。

その後、世界遺産は1972年に、「文化遺産や自然遺産を人類全体のための遺産として損傷、破壊などの脅威から保護し、保存していくために、国際的な協力及び援助の体制を確立すること」を目的とした世界遺産条約の中で定義された。

対象となるのは有形の不動産で、建造物や遺跡などの「文化遺産」、自然地域などの「自然遺産」、文化と自然の両方の要素を兼ね備えた「複合遺産」の3種類がある。

「紀伊山地の霊場と参詣道」は文化遺産として登録されている。

空海ゆかりの地、世界遺産へ

2004年7月、紀伊山地の霊場と参詣道は、日本では12番目の世界遺産として、リストに登録された。

世界遺産は、
「遺跡、景観、自然など、人類が共有すべき『顕著な普遍的価値』を持つ物件のことで、移動が不可能な不動産やそれに準ずるもの」を、保全することを目的として認定される。

つまり、世界遺産リストに登録されるということは、それが国や地域などの限られた範囲でのみ価値がある存在なのでなく、世界中の、すべての人類にとって価値があると認められたことになる。

吉野、熊野、高野山は、それぞれの霊場、聖地を信仰する人達だけのものではなく、世界中の人々の共通の財産なのだ。

また、これにより、 京都の東寺、奈良の東大寺と高野山、空海と特にゆかりの深い場所はすべて、人類共通の財産として世界遺産リストに登録されていることになる。

「世界遺産」になる事の意味とは?

「顕著な普遍的価値」が世界遺産登録の鍵

さらに具体的に、世界遺産リストに登録されるためにはどんなことが必要になるのか?

その登録基準は10項目あり、その内のひとつ以上を満たしていることが登録の条件だ。1から6までの項目は文化遺産に関わるもので、7から10は自然遺産に関するもの、両方にまたがるものは複合遺産となる。

世界遺産に登録したい「物件」がある場合には、地方自治体などが、まず、国にユネスコの「世界遺産暫定リスト」への登録を依頼する。

これがユネスコに登録されたあと、国の文化審議会から、世界遺産への推薦を得る必要がある。登録への条件が整ったと判断されて、この推薦があると、はじめてユネスコからの審査を受けられる。

審査に先立って、文化遺産の場合はイコモス(国際記念物遺跡会議)という専門機関が内容の調査を行う。

そして、専門機関からの報告書を元に、世界遺産委員会が審査をして登録するかどうかを決定する。

この決定までの流れの中で重要なのは、やはりイコモスによる調査。調査によって「顕著な普遍的価値」を認めてもらう必要がある。

「普遍的価値」の意味は、すべての人にとって価値がある、ということ。

すべての人がその存在を知ったときに、価値があると判断されるような物件かどうか?

しかも、それは現代に生きる人々だけでなく、過去から継承され、現在もあり、また、未来の人類にとっても同じように価値があると判断されるかどうか?

登録への鍵はそこにある。

ポイントは文化的景観

「紀伊山地の霊場と参詣道」は、2004年7月に世界遺産リストに登録されることになったが、その登録基準を満たしたのは、次の4点についてだ。

○登録基準(ⅱ)
紀伊山地の文化的景観を構成する記念物と遺跡は、東アジアにおける宗教文化の交流と発展を示す神道と仏教との比類のない融合の所産である。

○登録基準(ⅲ)
紀伊山地の神社と寺院は、それらに関連する宗教儀礼とともに、1000年以上にわたる日本の宗教文化の発展を示すたぐいまれな証拠である。

○登録基準(ⅳ)
紀伊山地は 日本の多くの地域における神社や寺院の建築に深遠なる影響を与えた(寺社建築及び寺院建築の)独特の形式を生み出す背景となった。

○登録基準(ⅵ)
同時に、紀伊山地の遺跡と森林景観は、1200年以上の期間にわたって、永続的かつ並はずれて良好に記録された信仰の山の伝統を反映している。

そもそも、紀伊山地は吉野、熊野、高野山に寺社が建てられる前から、都から見て太陽の昇る南に位置し、険しい山と山林、奇岩などが存在する、神の宿る聖域だとされていた。そういう自然を有して、信仰の対象、修行の場所としても文化的な発展をも遂げたわけで、その場所にあって見えるものから文化が感じられる、たぐいまれな文化的景観なのだ。

また、霊場そのものだけでなく、参詣道は、その道がただの険しい山道ではなく、ひとつの修行の地だとされているのがポイントだ。

巡礼路、参詣路は世界でたった2例

 「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産リストに登録されたことは、京都や奈良、日光、平泉などの神社仏閣が登録されたこととは、趣きが少し異なる。

これらは、もちろんそこにある建物、地区に対する評価でもあるが、それ以上に、「参詣道」としての価値が認められているのだ。

世界には様々な巡礼路、参詣道が存在しているが、世界遺産リストに登録されている約1000件の遺産の中で、この巡礼路、参詣道として登録されているのは、たったの2例。

もうひとつは、スペインにあるキリスト教の聖地、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路。 サンティアゴ・デ・コンポステーラは、エルサレム、ローマと並ぶキリスト教の3大聖地のひとつとされる。

「紀伊山地の霊場と参詣道」は、それと同様に評価されていると考えていいだろう。

高野山の場合で言うと、「町石道(ちょういしみち)」がいくつかある高野山への参詣道の中の中心的な道。

高野山の中心部、壇上伽藍を起点に、高野山への参詣道はじまりの地、慈尊院までの180町(1町=約109m)と、空海が入定する奥之院御廟までの36町、その1町ごとに置かれた「町石」と呼ばれる石塔が、参詣者の重要な道標として建てられている。

奥之院の表参道が世界遺産と認識される理由も、この「町石道」との関係が切っても切り離せないもので、この道そのものが神聖なものであり、古くからの信仰に深く関わっていると認められているのだ。

高野山は観光地としても三ツ星!

フランスのミシュランが発行するグルメガイド、いわゆる『ミシュランガイド』は、世界中で有名なレストランのガイドブック。
実はその「観光地版」があることをご存知だろうか? その名も、『ミシュラン・グリーンガイド』という。
『グリーンガイド』では、各国の観光地の中で、訪れる価値があるかないかを星の数で評価されている。これには日本版も存在していて、その中で、高野山は「わざわざ旅行する価値がある」を意味する三ツ星の評価となっている。
なお、二ツ星は「寄る価値がある」で、一ツ星は「興味深い」の意味だ。

高野山については、イコモスの調査委員からの評価も高い。委員を務めたひとりは、高野山の素晴らしさに感激して、調査のあとにも個人的に高野山を再び訪れたことがあるという。
外国からの観光客は、宿坊で袈裟姿のお坊さんが精進料理を運んでくれる姿など、「純和風」を体験できる場所は数少ないので、古き良き日本の姿を「ようやく見られた」と喜ばれるのだそう。

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